いつクリはてブロ

いつになったらクリエイティブするの?

地元民と盛り上がれるかもしれないコモンでディープな旭川市の話(1)[vivit_jc Advent Calendar]

この記事はvivit_jc Advent Calendar 2016 6日目の記事です。
vivit_jc Advent Calendar 2016 - Adventar
目次はこちら

私の出身地は北海道旭川市
北海道の真ん中からやや北の盆地に位置する、人口およそ30万の都市である。
私はここでは生まれてから、高校を卒業して上京するまで過ごした。
子供時代を含むので妥当な数え方ではないが、年数だけ見ると今住んでいる東京都調布市よりまだ2倍近く暮らしていたことになる。
この記事では、その旭川市の思い出についてざっくばらんに書いていくことにする。
これを読めば、旭川出身の(同年代の)人と盛り上がれるかもしれない。
我々にとってはありふれた(コモン)話題だが、我々しか知り得ない(ディープ)話題である。

ただひとつ問題があって、私は上京してからまだ旭川出身者に出会ったことが無い。(もちろん元々の知り合いは除く)
北海道出身者は何人か知っているが、大抵は皆札幌か函館である。
これは偶然ではないと私は考えている。地元に残ろうとする傾向が強いのではないか?
もしそうだとしたら、この記事が目的を果たせる可能性はかなり低いということになるが……別に大したことではないか。

もしあなたが旭川にお立ち寄りになったなら、この記事のことを思い出していただけると嬉しい。
観光の役には立たないと思うけれども。

旭川の冬と雪

寒いとは何か?

北海道の冬は寒い、というのは子供でも知っていることであるが。
実際どれくらい寒いかというと、-15℃という温度で書いてもあまりよく分からないのが本当のところだと思う。
ここで何が起こるか説明しよう。空気中の水分が凍るのだ。
これによって、空気中にちらちらと細かく輝く粒子が見える。ダイヤモンドダストである。
太陽に近い、日光がよく当たる方向を見るとより分かりやすい。また、橋の上など、川が近くにあると多く見える。
ダイヤモンドダストの他に凍結が分かりやすいところがあって、それは鼻の中である。
冷え込んだ朝には、鼻の中に何かが張り付いたような違和感がある。
旭川の人々が-10℃でも「今日は暖かい方」と無茶苦茶なことを言うのは、本当に寒い朝を身をもってセンシングしているからである。

ただ、-15℃もシーズンにそれほどあるわけではない。年に20日くらいだろうか?
-20℃まで行く日は多分年に1,2日であろう。
そういう日はスズメが生きたまま氷漬けになって死ぬと聞いたことがあるが、本当かな。
ちなみに観測史上最低気温は旭川市で記録されていて、1902年1月25日の-41℃である。
富士山頂のどの記録より低いらしい。

寒さに関しては別の観点があって、「一日中0℃から上に行かない日が2ヶ月続く」。
昔は平気で住んでいたわけだが、離れてみてそのおかしさを認識することは多い。

家の中は暖かい

これだけ寒いので、住宅も当然東京のものとは違ってくる。
壁には断熱材、窓は二重になっており、室内の温度を外に逃さないつくりになっている。
よく「道民は冬でも室内では半袖でアイスを食べる」という笑い話があるが、それほど間違いではない。

それと比べると東京の家は本当に寒い。部屋が暖まらなすぎる。
外がいくら寒くても耐えられるのは、家に帰れば暖かいからで、家に帰って寒いのは大変つらい。安心できないからだ。
旭川に訪れる機会があったら、是非住宅の構造を観察してみてほしい。
窓の他にも玄関フード(扉の前にガラスの温室のような空間がある)や灯油タンクなど、様々な違いを見つけられるはずだ。
玄関フードの中に見慣れないデカくて赤い道具がある? それはママさんダンプだ。

そうそう、旭川ではこたつをあまり使わないことも書いておこう。
家の中が平均的に暖かいので、こたつ布団の中に入る必要が無いのだ。
私は逆に、上京して初めて「こたつから出られない」という状態を理解した。

東北地方の住宅はそれほど防寒構造じゃない上に寒いという話を聞くので、生活条件の上で一番寒くて厳しいのは実は秋田や岩手辺りなんじゃないかと思っている。

積雪

さて、寒さはこんな感じだが、雪はどうだろうか。
北海道はどこも一律に雪が降るわけではなく、実は太平洋側は雪がそんなに降らない。
旭川は降る降らないで言えばかなり降る地方だ。
つまり旭川は寒さと雪の二重苦なのである。これは北海道内でもなかなか無い。
毎年この季節は30万人ほどが毎日厳しい自然と戦っているのだ。よく人住んでるな。

地方都市の例に漏れず、旭川市も高齢化が著しい。
体の弱ったお年寄りが力を振り絞って何時間もかけて延々と除雪をしているのを考えると、苦しいものがある。

とはいえ、除雪自体は幼い頃から慣れたものなので生活の一部である。
除雪自体より困るのは、雪のせいで自転車に乗れないことだ。
これは当時の自分が高校生だったからではあるが(大人は車で移動する)、自由に動き回れる範囲が狭くなるのは大変だ。
雪が降り積もって自転車に乗れないのは12月中旬から3月中旬頃までなので、1年のうち1/4は自転車に乗れないことになる。

滅多にないことだが、今年は11月中旬の時点で雪が積もってしまった。
春まで積もったまま解けない雪のことを「根雪(ねゆき)」と呼ぶのだが、これだけ早い根雪は初めてだと祖父が言っていた。
雪との戦いが例年より1ヶ月増える。厳しい。

雪といえば、旭川では何年かに一度、5,6月にも雪が降ることがある。
雪に慣れているといえども、その季節に降ることはあまりないので、ちょうど東京で積雪があった日のように混乱する。

交通機関への影響

ニュースでは新千歳空港の便がよく止まるので印象に残りやすいかもしれないが、実は旭川空港はあまり積雪では止まらない。
それはあらかじめ予算が振り分けられていて、装備が充実しているからだ。
札幌や千歳の辺りは極端に多く降る日は何回も無いので、その分予算が少ない。
積雪対策よりも飛行機を止めた方が安上がりなのだろう。

市の除雪事業はかなり頑張ってはいるが、それでも道路や電車など交通機関が麻痺する日はある。
雪が膝の高さくらいまで降ると、さすがに朝はまともに通勤・通学できないので、どれだけ遅刻してもお咎めなしになる。
そうでなくても、少し雪が積もっただけで朝は大渋滞になる。
いつもは車で15分で着く場所でも40分以上かかるのはざらだ。
高校の頃はバス通学だったのだが、冬は一本でも遅れると致命的であった。

深い雪の日は夜の間ずっと、重機とトラックが除雪をし続ける。
それらのゴウンゴウンと重々しくも頼りがいのある音と、黄色いパトランプを部屋の窓からこっそり眺めるのが子供の頃好きだったのだが、一晩でどれだけの金が使われたのだろうと思うとなかなか苦しいものがある。

ウィンタースポーツ

旭川は盆地なので四方を山で囲まれている。そんなわけでスキーやスノーボードはし放題だ。
特にスキーは小中高と授業に含まれているので、どれだけ下手な人でもやったこと無い人よりはよほどうまくやれる。
しかしながら、私自身は、スキーがあまり好きではない。
小学校の頃、スキーが好きな父に強制連行されることが多かったためだ。
自分の意思に反してクソ寒い雪しかない坂道に数時間放り出されるのがどんなことか、想像できるだろうか?
たまに友達同士で行くならいいんだけどね……。

やってみたい気持ちはあるものの、結局スノーボードは経験しないまま上京してしまった。
高校によっては授業でスキーかスノボか選べるらしい。
やってみればよかったかな。

雪遊びとそり

子供がいる家には、そり遊び用のそりが絶対にある。
近くの堤防や公園、校庭の築山で滑って遊ぶためだ。
スキーやスノボもそういった小さな坂でやることがあるが、私にとってはそり遊びの方がずっと好きだった。
(高校生になってもたまにやっていたくらいだ)
シーズンで初めて雪が積もった日には、街中の子供たちがスキーウェア(これも一人一着、絶対にある)を着込んでそり遊びに出掛けるわけである。

また、そりは荷運びの道具として実際に使われる。
雪が積もってからはお年寄りがそりで物を運んでいるのをあちこちで見かける上、郵便配達の際もそりが使われる。
高校の頃に年賀状配達のアルバイトをしたことがあるのだが、高校生のようにバイクを使えない場合はそりを使ったりするようだ。

もちろんそり遊びの他に雪だるまやかまくらを作るし、雪合戦も休み時間はもちろん、下校しながらやったりする。
ただしかまくらはあまり大きく作りすぎると落盤事故が起こって危ないので大人の監督が必須である。
なお、1月になってからの雪はさらさらで固まりにくいので、本格的に雪像などを作るときは少し水を混ぜて湿らせる必要がある。

小学校の頃好きだったのはスノーホッケーという雪上でやるアイスホッケーで、いろいろ簡略化して小学生でもカジュアルにプレイできるようアレンジされたものである。
スティックは貸し出されていたので、外で遊ぶことがほとんどなかった私でもこれだけは時々参加していた。

屋根の雪

屋根に積もった雪は落ちるのじゃ。
重みによって圧縮され固くなった雪が高いところからまとめて一気に落ちるので、相当な破壊力を持つ。
下に植木があれば折れるし、車に落ちれば天井がボコボコになったりもする。
そこに人がいれば……言うまでもない。
なので小学校では必ず屋根の下に入るなと注意喚起される。

そうならないよう、屋根が斜めではなく平らになった家も多い。
ただし雪が残り続けると当然屋根が潰れるのでシーズン中に何回か人力で降ろさなければならない。
これがまたお年寄りにとっては大変な作業で、年に何人か誤って落下し死者が出る。
最近ではヒーターにより屋根に雪を積もらせない構造の家も増えているらしい。
過酷な環境ながら少しずつ進歩しているのが分かると、ほっとする。

ホントは1本で終わるつもりだったけど

自分でもびっくりするほど長くなった。まだ冬の話しかしとらんぞ!
というわけで次回に続きます!

北海道出身で旭川以外の人、あるいは他の雪の降る地方の人の話を聞けると嬉しいです。

次回予告

明日の記事は、アルファベットで書くと12文字、「c」で始まって「n」で終わる1単語からなるタイトルのゲームについてです。
お楽しみに。