5/14のゲームマーケット2017春にて、サークル「off-box」で頒布される『Balkan WarS 〜バルカン戦争〜』の紹介記事です。
バルカン戦争とは
バルカン戦争とは、衰退しつつあったオスマン帝国とバルカン同盟諸国(ギリシャ、ブルガリア、セルビア、モンテネグロ)との間で起こった第一次バルカン戦争と、その戦後処理で揉めた結果起こった第二次バルカン戦争のことを言います。
このゲームでは、プレイヤーはギリシャ、ブルガリア、セルビア、そしてオスマンのいずれかを担当し、戦争前夜と、第一次、第二次バルカン戦争において仲良く喧嘩しながら過ごします。
ゲーマー目線のおすすめポイント
シンプルゆえに試される「空気を読む力」
このゲームは「政略」「第一次バルカン戦争」「第二次バルカン戦争」の3つのフェイズに分かれています。
政略フェイズでは、6ラウンドの間に軍備を高めるか、ロシアと接近するか、オーストリアと接近するかのどれかを選びます。
また、第一次・第二次バルカン戦争フェイズでは、プレイヤーは実際に戦争するわけではなく(負ける国は自動的に決まります)、単に勝った国が負けた国のどの領地がほしいのかを提示します。
これらの選択はすべてバッティング方式(全員が一斉に選んだカードを伏せて公開する)なので、周りをよく見て選んでいく必要があります。
というのも、領地を獲得できれば勝利点が得られますが、領地を獲得しすぎると「お前ばかり領地をもらってずるい」とばかりに他国に戦争を起こされてしまうのです。
そのため、ロシアやオーストリアと仲良くする(領地を獲得しやすくなる)か、来る戦争のために軍備を整えておくかを、周りの様子を見ながら慎重に選ぶ必要があるのです。
あるいは、あえて点数の低い領地を要求するとか、獲得できなさそうな領地を要求することもあるかもしれません。
このように、『バルカン戦争』は交渉のないゲームでありながら、多国間の外交や戦争をシンプルに表現したゲームなのです。
求められるのは、バランス感覚や空気を読む力。この手のゲームが好きな方はきっと満足させてくれることでしょう。
また、読みが中心のゲームなので、感想戦まで大いに盛り上がれるはずです。
一箱で4度おいしい? それぞれ違った国々
このゲームでプレイヤーはギリシャ、ブルガリア、セルビア、オスマンの4つの国のどれかを担当します。
これらの国はそれぞれ、軍事重視や外交重視、単純に勝利点が高いなどそれぞれ異なる特徴を持っています。
オスマン帝国に至っては、「第一次バルカン戦争」フェイズでは必ず負け、領土を分割されてしまいます。
1プレイが短いゲームなので、毎回別の国を担当することで、違った感触でゲームを楽しむことができるでしょう。
非常に丁寧な歴史への目配せ
もし高校生の頃に世界史を学んでいたとしても、「バルカン戦争」がどんなイベントだったのかすぐに思い出せる人はそう多くはないでしょう。
第一次バルカン戦争は、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれたバルカン半島で1912年に起こった戦争です。
この戦争にバルカン同盟として参加したブルガリアが、同じくバルカン同盟で、領土分割において対立したギリシャ・セルビアに攻め込んだことで勃発したのが第二次バルカン戦争です。
結局これら戦争によって起きた国家間の関係性の変化が、第一次世界大戦へと繋がっていくわけです。
また、領土分割で対立し次の戦争が起こるというのは、続く第二次世界大戦についても同じくそうだったと言えるでしょう。
このように、バルカン戦争は戦争の世紀である20世紀の入り口として非常に重要な意味を持っており、ゲームを通して様々な視点で歴史の流れを味あわせてくれます。
また、史実を基にしたイベントカードは、「青年トルコ人革命」「クレタ島蜂起」「豚戦争」など歴史をもっと知りたい人のための道しるべにもなっています。
歴史を知るのが好きな人はもちろん、そんなに興味がない人にも「何か本でも読んでみようかな」と思わせてくれる、そんな丁寧な歴史への目配せも、このゲームの大きな魅力です。
『Hearts of Iron』シリーズや『Europa Universalis』シリーズなどのパラドックス社製ゲームのファンには見逃せない一品と言えるでしょう。
以下のサイトから、デザイナーのバルゴートさん執筆の、ゲームの歴史背景に関する連載記事が読めます。
これだけでもかなり読み応えのある記事ですので、ゲムマ当日をこの記事を読んで待ちましょう。