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劇場版『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』観ました

【注意】
ネタバレ満載の内容なのでお気をつけください。視聴後に読んだ方がいいかもしれません。


早い段階から予約販売されていた完成披露試写会のチケットが、前日でも普通に取れる状態だったので、我慢できずに行ってきました。
普段そういう記念イベントに行かないのですが、少しでも早く観たいという気持ちで行ったところ、キャストさんの制作裏話も聞けてとても楽しかったです。

私が行った回でトークを担当されたのは、白糸台の照役を除く4人の方々です。
日比美思さん(弘世菫役、トーク進行役)
・RaMuさん(渋谷尭深役)
・岩田華怜さん(亦野誠子役)
志田友美さん(大星淡役)

以下、トークのまとめです。
対応が分かりやすいように役名で書きます。

役を演じる上で気をつけたこと、演じた感想など

淡「演じる上で小学校高学年の妹を参考にした。幼さを出しつつ、幼くなりすぎないよう気をつけた」
尭深「自分自身はかなりお喋りな方なので、無口な役を演じられるか心配だったが、うまく出来たと思う」
誠子「役のために初めて短めの髪型にして、髪も茶に染めた。原作では緑髪だが、原作者の『現実から逸脱しない程度に再現する』という意向で茶髪に。『黒髪がよかった』と言われるかと思っていたが、案外評判だった」
(他登壇者から「似合ってるよ!」の声)

作中の細かいところ

尭深「『ハーベストタイム』という台詞をどう言ったらいいか、言い方をかなり練習した」
(他登壇者から「練習してたよね!」「してたしてた」の声)
菫「アーチェリーのシーンは競技用の本物を使っている。ポーズも実際の競技に即しているので、矢を放ったときに頬がむにっとなるが、実際の競技でもそうなる」

撮影現場でのエピソード

淡「麻雀練習は撮影期間と同じくらいかそれ以上長かった。一ヶ月くらい。出席簿があり、参加状態がしっかり管理されていた。練習場は夏場なのに空調が壊れていた時期があり、負けが込むと暑いせいもあり、かなりイライラした」
尭深「尭深は『ちょっとおもちの子』だが、キャスト発表の際にSNSなどで『すごいおもちの子』と言われていたのを覚えている。(会場に向かって)この中に『すごいおもち』って書いた人いますか?」

共演者について

誠子「麻雀練習の際はいろいろな方と麻雀できて良かった。南沢奈央さん(赤土晴絵役)と麻雀する機会なんてもう無いと思う」
淡「甘木じゅんさん(小走やえ役)のおもちがすごかった。麻雀練習中もつい視線が卓より少し上に向いてしまう」
菫「桜田ひよりさん(高鴨穏乃役)は、年少者なのに誰よりもしっかり者で驚いた」

映画自体の感想

制作発表からずっと楽しみにしていて、ドラマも毎週欠かさず見ていたのですが、ついに劇場版を見ることができ、その時点でもう幸せいっぱいです。

劇場版では削られると思っていた2回戦(vs越谷女子、劔谷高校、千里山)もしっかり入っていてよかったですね。後から見たら越谷女子と劔谷高校のキャラも再現度高くてすごく良かったです。
特に劔谷高校の大将の、最後の最後の絶望顔が強く印象に残ってます。これだよ…こういうのだよ…(ゲス顔

嗚咽RTA

長野編でもそうだったんですが、実写のビジュアル補正というのは思ったより私に効くらしく、冒頭でOPテーマが流れながら各校の様子が描かれる時点で大体泣きます。
阿知賀編での冒頭は、予想に反してレジェンドと小鍛冶プロのシーンから入ります。言葉もなく視線を交わすだけという意味深なシーン、そしていつものナレーション。オーソドックス(?)な青春物語である長野編から人物関係が少し多層化している阿知賀編らしい始まり方です。

強い人は強い、尖ったキャラの立たせ方

咲本編だと、結構「麻雀はこんなに強いけど実はこんな一面も」という形(逆もある)でキャラを補強することが多い印象があります。
例えば衣ちゃんが最たる例で、かじゅ先輩の勢いに任せて大勢の前で恥ずかしいことをしちゃうのを後から恥ずかしがる姿とか、照のお菓子ずっと食べてるところとか、あるいは小鍛冶プロと恒子の掛け合いだとか、枚挙に暇がないですね。
実写版ではその辺かなり取捨選択されており、「強いキャラは強い」「怪物は怪物」という感じでキャラを尖らせているという違いがあります。
これはもちろん尺の都合もあるでしょうが、私が実写版を気に入っている理由でもあります。
阿知賀編でも長野編と同じく徹底されており、照の絶対強者感、小鍛冶プロの因縁の相手感、あるいはラストの穏乃もそうで、麻雀バトル作品だぞ、真剣勝負だぞという感じが強調されていて本当に好きです。

嗚咽が止まらない先鋒戦

阿知賀編で一番の見所と言っても過言ではない準決勝先鋒戦ですが、もう素晴らしすぎて言葉も出ないですね。
最初は怜のモノローグが続き、すばら先輩の露骨な鳴きからチャンピオンを共闘して止める展開になり、怜のトリプル発動、そして……。
玄が手牌のドラを見て気付くシーンではもう劇場なのに変な声が出ました(号泣して)。
実は今もこの文章を書きながら思い出して涙を流しています。
劇場版でも怜の主人公っぷりは際立ってましたね。
実写だと対局中の怜の体調不良っぷりが本当にリアルで死にそうな感じが出ていて良かったです。

阿知賀編は「絆」の物語

阿知賀編の「人間関係の多層化」について。
阿知賀編は松実姉妹(と母親)、灼とレジェンド、怜と竜華、新道寺のダブルエース等、絆が直接麻雀に関わってくるので、泣くなという方が無理。
原作ではサイコキネシスレズドッキングだったリザベーションは、実写に即したすごくカッコイイ演出になっていましたし、カットされるかと思っていた枕神怜ちゃんも見事に再現されていました。(回想シーンをああいう風に使い回すのすごいですよね)
絆の物語は原作からの取捨選択だけでなく、実写版で追加されたシーンからも相当意識していることが伺えます。
一番大きいのは灼と晴絵、それに小鍛冶プロ関連のシーンで、灼も小鍛冶プロもどんだけ晴絵をプッシュするんだよというくらい晴絵に言及するので、そこを物語の軸にした構造として、かなり分かりやすくなっています。
特にラストの晴絵と小鍛冶プロの会話(そう、まともな会話をするのです)は、麻雀バトル作品である本作を総括するにふさわしい、実に味わい深い内容でした。

絆の物語としてもう一つ取り上げたいシーンが、大将戦終了後の新道寺の控室のシーンです。
原作ではすばら先輩はいい意味でいつも中立的で、大将戦終了後も差し入れを持ってきたりするんですが、実写版ではチームで悲しみを共有するという風に描かれています。
その上で、部長の「リザベーションは破られなかった」の一言。
新道寺ファンにとっては5年目の福音といえるかもしれません。

すばら先輩が「姫子……」と下の名前で呼びながら抱きしめるの、こみ上げてくるものがありますよね。

解説役と監督役

脇役キャラが好きなので、特に副将戦で船Qが誠子をボコるシーンがカットされたのは少し残念でした。仕方ないね。
解説役、というかジョジョでいうところのスピードワゴン役が結構好きなんです。
長野編では監督も解説役もいないので、何か起こるたびに竹井部長と透華と一コンビと風越キャプテンが交互にリアクションするという、ちょっと面白い構造になっていました。
阿知賀編では解説役キャラ(船Q)と監督(晴絵)がいるおかげで、事前分析やモニタを見ながら相手の特徴に気付くシーンがキャラの性質をもって妥当にリアクションされるという整理された構造になっています。
ボウリング絡み、普通気付けるか??(ドラマ版では「特徴的な多面張」としか解説されておらず、船Qによる解説の前フリとなっていました)
全国編(清澄高校の全国大会2回戦)などでもキャラの分析はかなり重要になっていますので、もし実写化されるとしたら、この辺りがどうなってくるのか今から楽しみです。

意味が分かった大将戦

麻雀における穏乃の能力というのが、これが主人公にあるまじき分かりにくさで、しかも原作ではっきり説明されるのが当の大将戦の真っ最中なので、気になるところではあったのですが、実写化においてその辺がかなり補正されていたのは特筆すべき点です。
原作では描かれなかった晩成高校との対局と2回戦の両方で、穏乃がちょっと不思議な打ち方をして、それで結果的に勝利するという導線がしっかり用意されています。
原作では衣ちゃんが少し穏乃の能力について触れるシーンがあり、それがカットされているということを考えても、かなり納得感があるのではないでしょうか。

大将戦は新道寺も千里山も絆パワーでブーストしつつ、オーラスではテンパイまで持ち込んで誰が上がってもおかしくない状況でした。
結果が分かっていてもハラハラします。
そこに説得力のある主人公の強さが刺さって決着するという形になっており、見事な脚本という他ありません。

そんなわけで

既に試写会と公開当日の2回観に行ったわけですが、まだ上映は始まったばかりなので、また何回か観に行ってこようと思います。

1週目の特典ブロマイド。2週目分ももらいに行かなきゃ……。