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いつになったらクリエイティブするの?

ボードゲームの調整における段階について

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ボードゲームのテストプレイの際、今どの段階にあるか全員で認識を一致させておく必要がある。

フェーズ1

世界観、コンセプト、デザイナーがプレイヤーにどんなことを楽しんで欲しいかをはっきりさせる
・デザイナーの考えと実際のゲームがあまり一致していないなら、どちらかをもう一方に寄せた方がいい
・実際にプレイした結果、デザイナーが面白いと思っていた部分が面白くなかったと分かる場合もあるので、必ずしもデザイナーの考えに寄せる必要はない
デッドラインサバイバーの例:当初は「山札の中に締め切りがあってそれを各プレイヤーがこっそり覗いたり枚数を操作していい感じに締め切りをコントロールする」というアイディアに基づき作られたが、実際にやってみると面倒臭い割にあまり面白くなかった

フェーズ2

フェーズ1を達成するため、どんなルール・コンポーネントを利用すべきかを検討する

フェーズ3

フェーズ2を基に、コンポーネント量やプレイ時間など現実的な上限・下限を仮定してそれに収まるようにテストセットを組み立てる
・当然、カードやチップ、コマの枚数を減らせば単価が下がるが、どっさりコンポネが入っていた方が感触が良いこともある
・例えば山札の枚数が足りない時、カード枚数を増やすのと、プレイヤーの使うカードを減らすののどちらが感触が良いか(山札切れを防止するために、単にカード枚数を増やす以外に何か方法はないか?)

フェーズ4

各要素が極端に強すぎたり弱すぎたり存在感が無かったり煩雑だったりしないか確認する。ルールの詳細、例外規定などを詰める(ただし基本的に例外が出ないルールにするよう修正する)

フェーズ5

微調整。適切なコストや勝利点に変更する。誤解しにくい文章、カードデザインにする。

例1:妹再生産

フェーズ1:「拡大再生産を短時間でシンプルに楽しめるカードゲームが欲しい。増えると嬉しいものは何か? そう、妹だ」
フェーズ2:「妹を12人用意する。妹を出すために妹パワーが必要で、それは妹から出る。性転換や親の再婚などイベントカードで妹が突然増えたりする」
フェーズ3:2000円に収まるカード枚数にするため、山札はリシャッフルして何度も再利用するようにした。そのために手札をなるべく抱えないようなルールにした(手札からカードを捨てると妹パワーが出る)
フェーズ4:イベントカードは理不尽感があるので性転換を残して削除。1ターンに1回使える能力は、毎ターン使えると強すぎるか弱すぎるかのどちらかになるので、場に出した時に1回だけ使えるように変更
フェーズ5:コストの設定など。第二版でさらにコストや終了条件を調整した。また、妹パワーを産出するだけの妹は産出量の数字のみを書いていたが、テキストでそれを書くことにした。

例2:カラデシュ

フェーズ1:エーテルパンクの世界。エーテル(謎の流体、何かエネルギーに満ちあふれている)を使った発明品で溢れている
フェーズ2:エーテルはエネルギーカウンター、発明品は飛行機械トークンや機体で表現する。
フェーズ3:カードは全部で260枚前後。機体は大きいのと小さいのと中くらいのが数枚ずつあり、それぞれの性能とレアリティはこれくらい。エネルギーカウンターを増やすカードと使うカードのバランスは云々、各色でどう使うのか云々。
フェーズ4:機体のルール調整など(以下、https://mtg-jp.com/reading/mm/0017667/より引用)

我々の解決策は、コストとしてマナを支払うのではなくタップするようにするということだった。乗車するためには、適切な数のクリーチャーをタップする必要があるようになった。そうすれば、そのターンの間攻撃したりブロックしたりできるのだ。これで〈大型戦車〉は「乗車2」だけが書かれるようになった。これは、この5/5トランプル・クリーチャーで攻撃するためには、その前に自分がコントロールしているアンタップ状態のクリーチャーを2体タップしなければならないということを意味する。

彼らは、機体に問題を見つけたと言った。そして、彼らのその問題についての説明を受けて、私は『Ham』のメカニズムに関する解決策が『カラデシュ』で使われているということを理解した。「搭乗5」は、5体のクリーチャーをタップする必要がある、という意味ではなく、パワーの合計が5以上になるように好きな数のクリーチャーをタップする必要がある、という意味になったのだ。

フェーズ5:省略。ちなみにカラデシュでは3枚のカードが禁止カードに指定された。


テストプレイや、そのフィードバック、どこをどう調整すべきかの議論をスムーズに行うには、以下の原則が守られている必要がある。

  • 全員が今どのフェーズの話をしているのか確認する。それぞれが別のフェーズの話をするのは混乱を招くだけだし時間の無駄である。例えば初回のテストプレイが終わり、フェーズ2を固めていく作業中に、フェーズ4や5(個別のカードテキストの妥当性など)の話をしてはいけない。それらは下のフェーズによって容易に変わり得るので今話しても意味がない。
  • 下のフェーズをやり終え、上のフェーズに上がったのなら、もう下のフェーズに戻らない。特にフェーズ3以降に進んだ後でフェーズ1や2を問い直すことは、してはいけない。(どうしてもそうせざるを得ないことも稀によくあるが)

一番手っ取り早いのは、デザイナーが「今このフェーズの話をしてます!!」と宣言することである。
もちろん、フェーズの境界は多くの場合曖昧だし、3から5の間では何度も行ったり来たりすることになる。それでも、テストプレイヤー側も段階別の考え方を分かっていれば、話が通じやすいので便利だ。
何度でも書くが、それぞれが2段階以上差のある調整のアイディアを持ち寄るのは時間の無駄である。