ホラーにそんなに詳しくない人でも、『富江』というホラー作品をどこかで目にしたことのある人は多いのではないでしょうか。
伊藤潤二先生は、『富江』シリーズを始めとする数々のホラー漫画作品を世に送り出した巨匠です。
PS2に『SIREN』というホラーゲームがあります。
私はこのゲームがとても好きで、またニコニコ動画などにいまだにプレイ動画が投稿されるほど人気の高い作品でもあります。
このゲームの元ネタのひとつと言われる伊藤先生の『サイレンの村』*1という短編漫画をふと読みたくなったのが、『伊藤潤二傑作集』を購入したきっかけでした。
『富江』についても前々から読みたいと思っていたので、いい機会なので一緒に購入。
- 作者: 伊藤潤二
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/03/18
- メディア: コミック
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この『伊藤潤二傑作集』シリーズは少し前までは品薄で手に入りにくかったらしいのですが、現在はKindle版が販売されており、入手は容易になっています。
私もKindle版を購入しました。電子書籍便利ですね。
明日役に立つかもしれない『富江』の基礎知識
『富江』は、絶世の美少女富江と、彼女に関わったことで狂気と絶望に突き落とされていく人々の物語です。
- 作者: 伊藤潤二
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/01/20
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富江は誰もが認める究極の美少女で、特に男性はひと目見ただけで彼女の虜になってしまいます。
しかし同時に、彼女に魅せられた男性たちは、不思議なことに皆狂気に陥り、やがて彼女を殺してバラバラにしたいという欲望を抱くようになります。
そして実際に彼女は「何度も」殺されます。
富江は特殊な体質の持ち主であり、バラバラになった肉片は徐々に再生・成長し、それぞれが一人の富江になります。
そうして富江は様々な場所に現れては人々を恐怖の世界に巻き込んでいく……というのが富江の大まかなストーリーです。
もうなんていうか聞いただけで気持ち悪いですね。
好きキャラ描いてる時の心情 pic.twitter.com/MJkhYxCzbf
— おとうふくん (@touhu278) 2014, 9月 10
富江に魅せられた男性は大体こんな感じになります。
特異体質おもしろ人間のオンパレード
伊藤潤二の短篇集がkindleにあったので試しに買ってみたんだけど、特異体質おもしろ人間がたくさん出てきて電撃文庫で全然いけますやんと思いました。
— 土井ヴぃ@一週間pendingおじさん (@vivit_jc) 2014, 9月 25
短篇集でも富江と同じように、特異な人間や道具がきっかけで人々が恐怖に飲み込まれていくというタイプのストーリーが多いです。
自分の顔を持たず近くにいる人間の顔をゆっくりとコピーしていく少女や、死んだ人を蘇らせる剣、自分の娘や息子の意識を乗っ取り体を自由に動かせる男などなど。
これらの題材は、どれも描き方を変えれば少年漫画やラノベにでも出てきそうな存在です。
伊藤潤二先生の場合、それらが何を巻き起こすかを、緻密に描かれた背景と鬼気迫る人物の表情、そして飛び散る血によって見事に描き切っています。
一話読み終えるごとに「あーホラー読んだ!満足!」という気持ちが湧き起こってきます。
日常の中の非日常と、現実への帰還
ホラーは大雑把に分けて怪奇タイプとリアリティタイプの2種類があります。
怪奇タイプは、現実には(多分)存在しない怪物や幽霊、不思議なものなどによるホラー。
リアリティタイプは、現実にかなり近い範囲内で展開されるホラーです。
伊藤潤二作品の場合は大体が前者です(たまに後者もありますが)。
怪奇タイプのホラーのいいところは、現実に起こり得ないがゆえに、読んだ後に「現実に戻ってきた」という安心感が用意されているところです。
リアリティのあるホラーだと、とにかく読んだ後に安心できないんですよね。
(心霊写真特集の後にトイレに行けなかったり、水道から髪の毛の束がドボッと出てきたりしないか怖くなるアレです)
旅行や遊園地*2から帰宅して、「やっぱり家が一番安心できる」という読後感、これがかえってホラー作品のエンターテイメント性を高めていると言えるかもしれません。
そういった点で、ホラーが苦手という人にも伊藤潤二先生の作品は割とおすすめです。(ただしグロ耐性がないとちょっとキツいかも)
読んだ後、なんとも言えない充実感に浸れること間違いなし。
秋の夜長にホラーに耽りたいという方は、読んでみてはいかがでしょうか。
もっとも、果たしてこの現実が本当に安心できる場所かどうかは、分からないんですけどね。