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いつクリはてブロ

いつになったらクリエイティブするの?

ゲームはどこから生まれるか?〜シンデレラのおしごとデザイナーズノート(前編)〜

『シンデレラのおしごと』を作ろうと思ったのは2015年の8月中旬頃、ちょうど夏コミが終わった後くらいだったので、もうすぐで丸一年になります。
私が作るアナログゲームとしては、『ハコモノギョーセイ!』『DECK and SLASH』『量子カノジョ』に続く4本目のタイトルで、今までのゲームの中で一番アナログゲームっぽい内容です。

アイドルマスターシンデレラガールズ』については、配信すぐ後(2012年末頃)から断続的にプレイしていました。
好きが高じてえっちな二次創作小説本を作ったこともあります。
個性的なたくさんのアイドルが活躍するのをアナログゲームで味わいたい! という意図はもちろんあるのですが、実際に『シンデレラのおしごと』を作った理由はここから少し違ったところにあり、今回の記事ではそれについて書いていこうと思います。

ゲームはどこから生まれるか?

皆さんがゲームを作るとき、その動機は一体なんでしょうか?
『シンデレラのおしごと』の場合、それは不満でした。
といってもネガティブな意味ではなくて、もっといいものを作りたいという改良への欲望と、挑戦心が私を動かしたのです。
ひとつはワーカープレイスメントというスタイルのアナログゲームに対する不満。
もうひとつは『アイドルマスター』というゲームに対する不満です。

ワーカープレイスメントへの不満

このような記事を読む人にとってはもはや説明不要だとは思いますが、念のために説明しておきましょう。
ワーカープレイスメントとは、プレイヤーが選択できる行動(海で魚を釣るとか、市場から商品を買うとか)の上限回数がプレイヤー全体で共有されており、早い者勝ちで埋まっていくスタイルのゲーム、およびその仕組み(メカニクス)を指します。
海で魚を釣れるのはそのラウンドで2回までで、それ以降は誰も魚を釣りに行けません。
行動が埋まっていることを示すために、多くのゲームではプレイヤーが労働者(ワーカー)の駒を配置(プレイスメント)するのでこの名前があります。

ところで、実際にゲームを遊んで、あるいはこの説明を読んでこう思った人はいないでしょうか。
「どうして先着2名しか魚を釣れないんだろうか、場所はいくらでもあるのではないか(広大な海を見渡しながら)」と。
私がそれを特に感じたのは『アグリコラ』で、まあ魚を釣るアクションや家畜を獲得するアクションが先着順なのはいいとしましょう。
ボードに描かれている漁場は小さな池で、同時に何人もは入れそうにないし、市場で売っている家畜の数が限られているのは分かります。
でも自分の家の畑を耕して種を蒔くのが先着順なのはなぜなんだ?
さらには、(人間の)子供を増やすのも先着順なのは一体どういった理由なんだ!?
そう強く思ったのです。

このように、ゲームの語る状況設定(フレーバー)に違和感があると、ゲーム自体にも不満が出てくることがあります。
アグリコラ自体は個人的には嫌いではないのですが、不自然なフレーバーの影響か、窮屈なゲームだという印象がかなり大きいです。

アイドルマスターへの不満

一方でアイドルマスターへの不満は、私が初めてプレイした『アイドルマスターSP』まで遡ります。
ゲームとしてのアイドルマスターは、主にレッスンとライブバトルに集中しており、これはアーケード版の初代アイドルマスターから変わりません。
しかし、これは私達が現実で目にするアイドルと比べるといささか小さな領域に収まりすぎているように思えます。
アイドルと一言で言ってもその活躍分野や仕事内容は千差万別です。
水着写真集を出したり、CMやドラマ、映画に出演したり、テレビでリポーターを務めるだとか、ファッションに集中した仕事をこなすアイドルや、エッセイ集を出版するアイドルもいます。
逆に最近では声優がアイドルと区別が付かないくらい歌ったり踊ったりしていますし、アイドルという存在がますます多彩になっていると言えます。

本家アイマスのアイドル候補生たちは、例えば歌に並々ならぬ情熱を注ぐ如月千早など、歌と踊りに集中する説得力がありました。
しかしシンデレラガールズのアイドルたちは本当に、過去に類を見ないレベルで精鋭化したキャラクターが200人以上います。
これだけのアイドルがいながら、歌って踊るだけでいいのでしょうか?

ライブ以外に活躍の場が無いわけではありません。
本家アイマスには営業というアクションがあり、CDのレコーディングから写真撮影、雑誌インタビュー、プライベートの1シーンなどアイドルが多方面で活躍する場を垣間見ることができました。
しかしそのような仕事は、ゲームとしての重要性は薄く、シンデレラガールズに至ってはただのステージ名でしかないという非常に小さな扱いです。
もちろんレッスンとライブに集中するのはゲームデザインとしては正しいのですが、この勿体なさが何とかならないかと、私は当時から不満に思っていました。

調和がよりよいゲームをもたらす

ワーカープレイスメントというメカニクスから来るフレーバーへの不満と、アイドルマスターというフレーバーから来るメカニクスへの不満。
この二つが結びついたとき、『シンデレラのおしごと』が誕生したのです。
様々な仕事があり、それぞれのアイドルに向き不向きがあるが、同時に仕事は先着順なので、時には得意でない仕事に行かなければならないし、仕事ができない時もある。
いまやフレーバーとメカニクスは完璧に調和しています。

フレーバーとメカニクスがうまく組み合わさっていればいるほど、直感的なゲームになり、またゲームの楽しさも増します。
『シンデレラのおしごと』の場合、早いもの勝ちの行動をプロデューサーの仕事として分離した結果、アイドルが行う仕事は点数にのみ関わるというデザインになりました。
これによりアイドル自身の特徴が目立ち、アイドルが一番活躍できる仕事を選ぶという「アイドルプロデュースゲーム」に相応しいデザインになったと自負しています。
また、従来のアイドルマスターの雰囲気を残すため、ライブは必ず行われるように設定し、制限がなく全てのアイドルが参加できるようにしました。
「アイドルプレイスメントゲーム」とは、ワーカープレイスメントとは一線を画したゲームになったという自信の現れです。

これをお読みの皆さんの心に、もしゲームに対する不満や納得のいかないもやもやがあるなら、自分でゲームを作るというのは最高の方法のひとつです。
是非挑戦してみてください。

プロデューサーの皆さんの中には、アイドルのステータスが伝統的なボーカル、ダンス、ビジュアルの3つではなく、このゲーム独自の4つになっていることが気になった方もいるかもしれません。
後編では4つのステータスが何をイメージしているのか、そして4つ目のステータスであるトーク力が追加されたあらましについて書きたいと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。

追記

後編書きました
vivit-jc.hatenablog.com