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the Glass Shoe on Stairs デザイナーズノート(後編)〜天真爛漫な子供と女の子と背伸びする子供と少女になりたての女の子〜

この記事は、コミックマーケット91(2016年12月)にて頒布した一人用カードゲーム『the Glass Shoe on Stairs』のデザイナーズノートです。
前編はこちら。
vivit-jc.hatenablog.com

薫、舞、ありすが選ばれたワケ

「ジュニアアイドル3人が大人の階段を上る」というアイディアはすぐに思いつきましたが、これは歌姫庭園などオンリーイベントにて当日こっそり行っていた『シンデレラのおしごとに欲しいアイドルアンケート』の結果を反映したものです。
特に、少ない投票数ながら薫の人気が高く、私個人が『スターライトステージ』で初めて引いたSRが薫だったこともあり、薫を入れたい、どうせなら他の属性の小さな子たちも入れたいという思いがありながら、枚数の関係で拡張にセットで入れるのはちょっと難しい。
そんな事情から、テーマに従った3人で、独立させることに意味があるアイドルたちというわけで、この3人が選ばれたのです。
おまけ要素として、大人の階段を上って成長した彼女らの姿をイラストレーターさんに描いてもらうというのも、案を思いついたと同時に思いつきました。
(企画だけは本当にまとまるのが早かったのです。それ故に油断したのですが)

素敵なイラストを描いてくださったイラストレーターの皆さんには本当に頭が上がりません。ひたすら感謝です。

龍崎薫

最年少のアイドルを出さずにどうする、ということでPa担当は薫と即決しました。
また、彼女の年齢から逆算して、15歳をゴールとすることも決まりました。
彼女に関するイラストやコミュは、どれも郷愁を強く訴えかけます。
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彼女のひとつひとつが胸に突き刺さり、強い痛みを引き起こすのです。

唯一の救いは、彼女がフィクションの存在であるということです。
つまり、彼女の台詞は実際の子供のものではなく、大人の「子供とはこういうもの」というイメージに基いて書かれたテキストから成り立っているという事実。
もし彼女が実在して、自分にこのような台詞を投げかけてきたとしたら……きっと私は正常ではいられないでしょう。
想像をするだけでも恐ろしいことです。

成長後の薫についてイラストレーターである塔子さんにお願いしたところ、お嬢様ドレスの衣装や趣味が料理という面から、天真爛漫な子供時代から少し女の子らしい姿に成長したイラストを描いていただきました。
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ちょっとこのポーズ可愛すぎんか??

福山舞

ゲームのルール上、3人の年齢は9、10、11、12のどれか3つをバラバラにする必要がありました。
そこで、L.M.B.Gのメンバーで薫との関係性が強い彼女がCu担当として決まりました。

今でこそ関係性を見いだしにくいものの、シンデレラガールズのサービス開始当初、彼女はテレビ番組『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』のまいんちゃん役である福原遥さんがモデルであるというのが定説でした。
(名前と、Nイラストの髪型や服装などを見れば明らかです……よね??)
福原遥さんの成長度合いは度々インターネット上で話題になることもあり、アイドルの成長する姿を描く本作にとってもピッタリの配役でした。

また、私自身にとって『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』の前番組である『ひとりでできるもん!』も、本作について欠かすことのできない存在です。
私にとって『ひとりでできるもん!』初代主役である平田実音さんこそ「テレビに出てる憧れのお姉さん」だったのです。
また、平田実音さんは高校生時代にNHK教育の歌番組に出演していたこともあり、思い出の中の彼女から成長した姿を見て「テレビの中の人も自分と同じように成長するんだ」と当たり前ながら強く印象に残った覚えがあります。
(それだけに、突然の訃報にはとても驚き、ショックを受けました)

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成長した姿の制作にあたっては、イラストレーターであるくるみるみさんが提示してくださった3つのパターンから選ばれたイラストになっています。
皆さんは彼女の成長後の姿をどう思い描きましたか?

橘ありす

成長というテーマにおいて彼女の存在は特徴的です。
シンデレラガールズ本編を通して彼女から伺えるのは、他の二人とは明らかに違った姿です。
すなわち、「大人になりたくて背伸びしている」あるいは「自分は大人であると思っているのに周りが子供扱いする不満」が色濃く感じられます。
子供が大人になる過程を描く本作にとって、彼女のそういった面はまさに本作の象徴なのです。

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サークルカットの時点で、イラストレーターのはるひとさんと
渋谷凛に似過ぎていないか(不安)」
「必然的に似ると思うのでこれでいいと思う」
という風なやり取りのもと、成長後のありすの姿が確立したという経緯があります。
実際、橘ありすと渋谷凛が同時代にアイドルとして存在したとしたら、ありすは凛の影響を少なからず受けるのではないでしょうか?
そんな空想をしてみるのも楽しいかもしれません。

佐々木千枝

薫、舞と来てCo担当が彼女でなくありすであることに違和感を覚えた方も多くいたと思います。
L.M.B.Gをはじめ、各属性で3人組を作るとしたら普通はそうなるはずです。
私も最後までありすと千枝のどちらにするか迷いました。
最終的に、当初思いついた時点での人選通り、ありすが選ばれることになりました。
その理由は、千枝とありすが想起させるイメージの違いにあります。

薫は「天真爛漫な子供」、舞は「女の子」であり、ありすは「背伸びする子供」というイメージでした。
先に挙げた通り、彼女たちはそれぞれ今の姿だけでなく、成長した後どうなるだろうという疑問が前提になっています。
しかし、千枝は違うのです。
先述のイメージ、またはプレイヤーから見た「配役」として、私は千枝について「少女になりたての女の子」であると考えています。
すなわち、彼女は11歳であることが最重要であって、成長させることによって彼女のアイデンティティは喪失してしまうのです。*1
だからどうしても彼女を選ぶことができなかったし、ありすをメンバーから除くこともまた不可能でした。

思い出カードのイラスト

個別のカードイラストは、当初背景素材等で手抜き簡素なスタイルにする予定だったのですが、思ったよりちょうどいいイラストが見つからないため、長年お世話になっているうのはな透さんにお願いして描いてもらうことになりました。
線画のままなのは、一人用ゲームのカードは何となくイラストが重くないイメージだったのと(完全に『シェフィ』の影響)、彼女たちにとっては未来の出来事なので色がついていない、という裏設定によります*2
決して彩色が間に合わなかったからというわけではありません(強調)

追記


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「大人になること」を知ること

私は大学に随分長いこと通っていたこともあり、20歳になってからいつも「大人ってなんだろう」と考えていました。
子供の頃はありすのように「周囲が自分を子供として見る不満」が募り続けていたのですが、いざ大学進学のために上京してそれがなくなると、大人とはなんなのか、分からなくなったのです。
それは社会人になってからも変わりませんでした。
何をやったら大人なのか。果たして自分は大人らしく振る舞っているだろうか。
周りの人々は自分を大人と見なしているだろうか。

20代も終わりに差し掛かり、そろそろいつまでもそんなことを考えている年齢でもないと思い始めました。
そんなときにこのゲームの企画を思いついたのは、偶然ではないかもしれません。

そういうことはゲームでは描かれていないので

とは言え、これまで書いた全てのことは、ゲームのプレイには一切関わらないことですし、プレイヤーがどんなことを考えながらゲームを遊ぶかはデザイナーが立ち入る領域ではありません。
しかし、ゲームを作るときは多かれ少なかれ、このような感情への揺さぶりを組み込むことにしています。
もしゲームを通じて何かを思い出したり切ない気分に浸ってもらえたとしたら、デザイナー冥利に尽きるというものです。
もし何もなくても……ひとまずは、ゲームを楽しんでいただければ、それだけで大満足なのですが。

宣伝:夏コミで『シンデレラのおしごと』の拡張を出します

前々からチラチラほのめかしていた通り、『シンデレラのおしごと』拡張第二弾を出します。
(もし夏コミに受かってなかったらちょっと考えます)

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何卒よろしくお願いいたします。



『the Glass Shoe on Stairs』は各イベントで直接入手できる他、とらのあなにて通販委託等も行われているので、是非ご利用ください!

http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/48/97/040030489779.html

*1:※個人の感想です

*2:今考えた